週160kmじゃなくてもいい。週1の2時間ジョグで走力は伸ばせる──リディアード式・有酸素期の考え方と実践法
🧠【理論編】有酸素期でやるべき“本当の目的”
アーサー・リディアードのマラソントレーニングは、しばしば「とにかく走行距離が多い」というイメージを持たれがちです。実際、彼が提唱したメニューでは週160km(100マイル)という数字が登場し、その数字だけが一人歩きしている場面もよく見かけます。
でも、それは“何のために”その距離を走るのかという本質を見失った解釈です。
■ 有酸素能力の最大化こそが核
リディアードの目的は明確です。
「有酸素能力を最大限に高めること」。これがすべての土台になります。
この有酸素期で得られる生理的な変化は以下のようなものです:
- 心拍出量の増加(心臓が強くなる)
- 毛細血管の発達(血流が良くなる)
- ミトコンドリア密度の向上(エネルギーを効率的に作れるようになる)
- 脂質代謝の向上(長時間走ってもエネルギー切れしにくくなる)
つまり、「スピード練習を効かせる身体」になるための準備期間です。
この時期に地味でもしっかり走れるかが、後半フェーズやレース結果に直結します。
さらに重要なのが、この有酸素期はレースから逆算して半年前から始めるべきという点です。
たとえば11月末にフルマラソンを走るなら、5月〜6月ごろから“基礎を作る時期”として走り込みを始めるのが理想です。
■ LSD(ゆっくり長く)とは違う
誤解されがちなのが、「LSD(ロング・スロー・ディスタンス)=有酸素期」だと思われてしまうこと。
リディアードが推奨したのは、「疲れ知らずで走れる、ほどほどに速いペース」です。
最大心拍数の70〜75%、乳酸閾値の少し下くらいのペースが理想。
長く、でもダラダラではなく、“心地よい集中”を保ちながら走ることが求められます。
🏃♂️【実践編】市民ランナーでも“有酸素能力”は伸ばせる
ここからは、実際に僕が取り入れたリディアード式の「有酸素期」アレンジです。
結論から言えば、週160kmなんて無理。でも、タイムは伸びました。
■ 走行距離にこだわらず、週1の2時間ジョグを最優先
一番大事にしたのは、「週に1回の2時間以上のジョギング」。
距離が稼げない週でも、この1回だけは欠かさず続けました。
理由はシンプルです。
“持久力”は、この長時間走の中でこそ作られるからです。
時間をかけて走ることで、脂質代謝が高まり、ミトコンドリアも鍛えられる。
疲れた脚で走る後半にこそ、心肺とメンタルも鍛えられる。
そう実感できたからです。
■ 週100kmは「目安」にすぎない
僕が設定していたのは「週100km」という現実的な目標。
でも、これは「毎週必ず守るノルマ」ではなく、あくまで“ちょっと頑張れば届くライン”という感覚でした。
それよりも優先したのは、
- 疲労を溜めすぎないこと
- 走る習慣を切らさないこと
- ケガをしないこと
つまり、「長く続けられるベース期」にすることです。
■ ハード&イージーで距離に波をつける
以前は「毎日12km」といった一定のジョグばかりしていたのですが、
この有酸素期では、8kmと16kmを交互に組み合わせて距離に波をつけました。
- 疲れてる日は8kmで早めに切り上げる
- 元気な日は16kmをテンポ良く走る
- トータルで週100km前後になるように調整
このやり方で、身体に“ゆるい回復日”を入れつつ、結果的に走行距離も稼げる形に。
■ ゆっくりではなく「疲れない程度に速く」
意識していたペースは「楽だけど集中力が必要」なレベル。
心拍でいうと、最大心拍数の70〜75%あたり。
苦しくはないけど、気を抜けば楽に流れてしまう、集中を保ち続けるペースです。
ジョグだけど“トレーニング”としての密度は高く保ちました。
✅ まとめ:市民ランナーにとっての有酸素期の成功とは
- 週100kmは絶対条件ではない
- 「週1回の2時間ジョグ」だけは死守
- 毎日の距離に波をつけて疲労をコントロール
- ペースは「疲れない程度に速く」がベース
- この期間が後のスピード期の効果を決める
「走り込みは苦手」「ジョグだけで意味あるの?」と感じる人ほど、リディアード式の有酸素期は効きます。
自分のペースで、でも確実に“強くなる”。その第一歩が、このフェーズなのです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
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僕自身も、ほとんどを“ぼっち練”で積み重ねてきた市民ランナーです。
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