「インターバルも終わった、距離も踏んだ、あとは本番を待つだけ──」
そう思って気を抜きたいところですが、リディアード式の期分けでは、ここが最後の山場です。インターバル期(無酸素期)の後にやってくるコーディネーション期(調整・統合期)は、これまでバラバラに鍛えてきた能力を「レースで発揮できる形」に統合するフェーズ。
ところが、ここで多くの市民ランナーがやらかす。「もう仕上げに入ったから」と毎週ロング走で追い込み、レース3週間前に疲労が抜けず、本番でDNFになる。あるいは「軽めにやろう」とジョグばかりにして、レースペースの感覚を失う。
それは、リディアードの言うコーディネーション期ではありません。
自分も最初は「2か月前だから毎週30km走ろう」と意気込み、3週間目で脚が動かなくなった。レースペースの感覚もぼやけて、本番では韓国の地で設定タイムの120秒オーバーで撃沈。あの失敗以降、コーディネーション期は「鍛える」ではなく「整える」だと割り切れるようになりました。
コーディネーション期の本当の目的は「能力を統合し、レース仕様に整える」こと
リディアードはコーディネーション期について、こう位置づけています。
過去に作った力を引き出し、レースで発揮できる形に統合する段階
このフェーズの主軸は 「鍛える」から「整える」へのシフト。
期分けの中でコーディネーション期は、有酸素期(土台)→ ヒル期(バネ)→ 無酸素期(スピード)と積み上げてきた能力を、レースペースに最適化するフェーズ。具体的には次の3つを狙います。
- レースペースに身体・心肺・神経を慣らす
- 疲労を残しすぎず、スピード刺激は保つ
- 「いつでも本番に入れる状態」を作る
「無理に追い込まない」のが大前提。過去4〜5か月の練習で作った力を引き出すフェーズであって、新しい能力を獲得する時期ではありません。
期間:4〜6週間限定
リディアード式コーディネーション期の原則は明確です。
- 期間: 4〜6週間
- レース 6〜8週間前から開始 → 残り 2〜3週間でテーパリング期に移行
- 週2回のキー練習+有酸素ジョグ+ロングランの組み合わせ
「2か月前から仕上げる」とよく言うのは、コーディネーション期 4〜6週間 + テーパリング 2〜3週間 = 約 6〜9週間という配分。最後の2〜3週間はテーパリングであることを忘れない。
4つのキー練習(優先度別)
リディアード式のコーディネーション期は、「何をやるか」より「どうやるか」が大事。すべてのメニューで意識すること:
- 疲労を残さない
- リズムとフォームを崩さない
- 終わった後に「いい感覚」が残る
- レースペース走は最長21kmまで
- 30kmロング走はレースペース+10秒/km より速く走らない
優先度①:レースペース走(16〜21km)
マラソン本番ペースで「淡々と走る」練習。週1で実施。
- 心肺・フォーム・呼吸を本番モードに切り替えるスイッチ
- 終盤の余裕度・脚の残り具合をチェック
- 16km → 18km → 21km と段階的に距離を伸ばすのが理想
- ペースはマラソン目標タイムそのまま
「このペースで42km走り切れる」という感覚を身体に染み込ませる時期です。
優先度②:30kmロング走(ペース段階式・プログレッシブラン)
長い距離でペースの「コントロール力」と「粘り」を鍛える。ペースは段階的に上げていく方式が有効。
- 前半10km:マラソンペース +30秒/km
- 中盤10km:マラソンペース +20秒/km
- 後半10km:マラソンペース +10秒/km
ダメージを残さずに、レース後半を意識した「粘る脚」を作る。
優先度③:テンポ走 / 閾値走(8〜12km)
LT(乳酸閾値)ペースで余裕度と集中力を養う。
- 目安はマラソンペース −20〜30秒/km
- 距離は8〜12km(短いとそこまで強度刺激にならない)
- 「ややきつい、でも会話はギリギリできる」強度
- 集中力を保つ感覚を磨くフェーズ
「マラソンペース-10〜15秒」では閾値ペースに届かない。マラソンより20〜30秒速いゾーンが本来のテンポ走です。
優先度④:シャープナー(100〜150m全力 × 12〜20本)
リディアード式のスピード刺激。スプリント&ウォーキング回復が原則。
- 100〜150m を全力で走る
- 同距離をウォーキングで完全回復
- 12〜20本を週1回
- レース 2〜3週間前から入れるのが標準
50m全力+50mジョグ は「ストライド(流し)」であり、シャープナーとは違う。リディアード本来のシャープナーは、もう少し長い距離で完全回復を取りながら、神経系と速筋を本気で目覚めさせる練習です。
仕上げに「タイムトライアル」を入れる
コーディネーション期のもう一つの柱が、タイムトライアル(TT)。
- レース 4〜5週間前: 3000m TT または 5000m TT
- レース 3週間前: ハーフマラソンTT または ハーフマラソン大会出場
これで自分の今の力が分かる。
- レースペース設定の最終調整ができる
- 「本番に対する不安」を数値で解消できる
- ハーフマラソンTTは、フルマラソンペースを決める根拠になる(ハーフ × 2 + 10〜15分 ≒ フルマラソンタイム)
TTをやらないと「自分はサブ3でいけるのか?」が最後まで曖昧なまま本番を迎えることになる。
1週間の組み立て例(コーディネーション期 4〜5週目)
曜日構成例(あくまで目安)
- 月:軽めのジョグ(45〜60分)
- 火:テンポ走 10km + ジョグ
- 水:完全休養 or 軽いジョグ
- 木:シャープナー(100m × 15本)+ ジョグ
- 金:軽めのジョグ
- 土:レースペース走 16〜21km
- 日:30kmロング走(ペース段階式)
ただしこれはあくまで例。シフト勤務なら下記の通り調整。
シフト勤務でも回すコツ
私はバス運転手のシフト制勤務。週ごとに練習時間が変わります。
そこで実践しているのは、「キー練習3つを必ず週内に入れる、順番は柔軟に」やり方。
- 絶対やる: ① レースペース走 + ② 30kmロング走 + ④ シャープナー
- 入れたいけど時間優先で省略可: ③ テンポ走
- 連勤明けは無理しない: 30km は休みの日の最大の脚を使える日に
「決めた曜日」より「今日の脚の状態」を優先。コーディネーション期で疲労を残すと、テーパリングで抜けきれないリスクがあります。
やりがちな失敗3つ
① 30kmロング走を毎週入れる
「2か月前だから毎週30km」は危険。30kmロング走はコーディネーション期 4〜6週間で2〜3回が標準。それ以上は疲労が抜けない。
② レースペース走を「ややきつめ」で走る
レースペース走は マラソン目標タイムそのまま が正解。「気持ちいいから少しだけ速く」と+5秒/kmで走ると、それは「ややインターバル」になり、本番ペースの感覚を失う。目標タイムで走ることにこそ意味がある。
③ レース直前まで30kmを入れる
レース3週間前以降の30kmは禁忌。ロング走は20〜25kmに段階的に短縮して、テーパリングに移行するのが鉄則。
まとめ
- コーディネーション期の目的は 「鍛える」から「整える」
- 期間は 4〜6週間限定、その後テーパリング2〜3週間
- キー練習4つ: レースペース走・30kmペース段階式・テンポ走・シャープナー
- テンポ走は マラソンペース −20〜30秒/km
- シャープナーは 100〜150m全力 × 12〜20本(50/50 ではない)
- 仕上げに 3000m / 5000m / ハーフマラソンTT で実力測定
- シフト勤務なら「キー練習3つを週内に入れる、順番は柔軟」
「Train, but don’t strain」リディアードの哲学は、コーディネーション期でも変わりません。過去の練習を引き出すフェーズで、新しい刺激を加えるフェーズではない。これを忘れずに4〜6週間を整えて走り切れば、テーパリングに入った瞬間に脚が軽くなる感覚が来るはずです。
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コーディネーション期は「整える」フェーズ。走り切るためのケアと、原典を手元に置くことで4〜6週間を質高く乗り切れます。
もっと具体的な数字とメニューが知りたい方へ
私が静岡マラソン(サブ2:42達成)に向けて実際に踏んだ6ヶ月分の月別メニューには、コーディネーション期の具体的な距離・ペース・TT結果も収録しています。
▶ 【マラソン】リディアード式「期分けトレーニング」完全実践ガイド|目標タイムに近づく6ヶ月プログラム(note)
期分け全体の流れを先に押さえたい方は、入門記事から:
→ リディアード式マラソントレーニング入門|「期分け」で迷子にならない練習の組み立て方


