「ここまで練習してきた。あとは休めばいい──」
そう思って、テーパリング期に一気に練習量を落としたランナーが、本番で脚が重くて30km過ぎに失速する。逆に、「まだ足りない気がして」と直前まで追い込んで、本番に疲労を持ち込んでしまう。
両方とも、リディアードが言うテーパリング期の「失敗パターン」です。
リディアード式のテーパリングは、「ただ休む」でも「追い込み続ける」でもない。距離は落とす。でも、強度の刺激はギリギリまで保ち続ける。この微妙なバランスが、レース当日の走りを決めます。
私は最初のフルマラソンのテーパリングで「とにかく休もう」とジョグばかりにした結果、本番で脚にキレがなく30kmで失速。翌年は「休みすぎ反省」で直前まで追い込んだ結果、本番に疲労を抱えて同じく失速。2回失敗して、ようやくリディアード式のテーパリングの「正解」が分かった気がします。
📚 この記事は「期分けトレーニング」シリーズの一部です
テーパリング期の位置づけや前後フェーズとのつながりは、ハブ記事で全体像を解説しています。
→ リディアード式マラソントレーニング入門|「期分け」で迷子にならない練習の組み立て方
テーパリング期とは:コーディネーション期の後、レースまでの2〜3週間
リディアード式の期分けでは、テーパリング期はコーディネーション期(4〜6週間)の後に位置します。
- 有酸素基礎期(16〜20週)
- ヒル期(4〜6週)
- 無酸素期(4〜6週)
- コーディネーション期(4〜6週)← ここまで「作る」期間
- テーパリング期(2〜3週)← 「引き出す」最終段階
- レース本番
テーパリング期の目的は、これまで積み上げた能力を最大限引き出せる状態にすること。新しい能力を作る時期ではありません。
リディアードの原則:
走行距離は段階的に減らす。だが、スピード刺激(シャープナー)は最終週まで入れ続ける。疲労を抜きながら、神経系の鋭さだけは落とさない。
3週間の週別ロードマップ
3週前(Week 1):コーディネーション期からのフェードアウト
コーディネーション期の強度を「1段だけ」落とす週。急激に落とさない。
週の目安:
- ロング走:20〜25km(コーディネーション期の30kmから縮小)
- レースペース走:12〜16km
- シャープナー:100〜150m × 10〜15本
- 総距離:コーディネーション期の 70〜80% に抑える
注意:3週前にまだ疲労が残っているなら、ロング走は20kmに抑える。「今週踏んでおかないと」は禁物。
2週前(Week 2):距離を落とし、刺激を鋭く保つ
最もデリケートな週。「距離を減らしながら、スピード刺激の鋭さは保つ」バランスの週。
週の目安:
- ロング走:15〜20km(ペースはマラソンペース+20〜30秒/km)
- レースペース走:10〜12km
- シャープナー:100〜150m × 10〜12本(本数を絞る)
- 総距離:コーディネーション期の 50〜60%
ここでやりがちなミス:「2週前だからまだ踏める」と思ってレースペース走を16km以上やる → 疲労が抜けきらないままレース当日を迎える。
1週前(Week 3):完全なフレッシュニング週
距離を最小化し、スピード刺激だけを残す週。体を「戦闘態勢」に整える。
週の目安:
- ロング走:なし(またはジョグ10km以内)
- レースペース走:5〜8km(短い刺激確認のみ)
- シャープナー:100m × 8〜10本(最終調整)
- 総距離:コーディネーション期の 30〜40%
最終日(前日):20〜30分のジョグ + 100m × 3〜5本(軽くシャープナー)。完全休養より軽い刺激を入れておく方が、リディアード式では推奨されています。
テーパリング期に欠かせない「シャープナー」の継続
コーディネーション期で導入したシャープナーを、テーパリング期でも最終週まで続けるのがリディアード式の大きな特徴です。
なぜ最終週まで入れるのか:
- 筋肉・神経系の「速筋スイッチ」を落とさないため
- レース本番で「スタートダッシュで詰まらない」動きの準備
- スピードの鋭さは、3〜4日練習しないだけで鈍りやすい
テーパリング期のシャープナー:
- 100〜150mを全力
- 同距離をウォーキングで回復
- 本数:3週前は15本、2週前は12本、1週前は8本と段階的に減らす
「直前は休まないと」という感覚と戦うのが、テーパリングで一番難しいところです。
走力別・週別の目安ペース表
| 週 | サブ3(4:16/km) | サブ3:30(4:59/km) | サブ4(5:41/km) |
|---|---|---|---|
| 3週前ロング走 | 5:30〜5:45/km | 6:20〜6:35/km | 7:15〜7:30/km |
| 3週前レースペース走 | 4:16/km × 16km | 4:59/km × 16km | 5:41/km × 16km |
| 2週前ロング走 | 5:40〜5:55/km | 6:30〜6:45/km | 7:25〜7:40/km |
| 2週前レースペース走 | 4:16/km × 12km | 4:59/km × 12km | 5:41/km × 12km |
| 1週前レースペース走 | 4:16/km × 6km | 4:59/km × 6km | 5:41/km × 6km |
やりがちな失敗3つ
① 「不安で追加練習してしまう」
テーパリング期に入ると、練習量が減ったことへの不安(いわゆる「テーパー・タントラム」)が出てくるランナーは多い。この不安感は生理的に正常な反応であり、練習不足のサインではありません。
ここで追加で30kmを入れたり、強度を上げたりすると、せっかく抜いてきた疲労を取り戻す羽目になります。「不安になったら計画通りに動く」のが鉄則。
② 「ロング走を直前まで引っ張る」
「2週前に30km走れた、いい感じ」→ これは コーディネーション期の延長であり、テーパリング期の走り方ではありません。
2週前以降は20km以上のロング走は不要。消化に数日かかる疲労を、直前に積み上げる必要はありません。
③ 「完全休養で脚が鈍る」
テーパリング = 休む、と思って10日以上ジョグのみにしたり、完全休養を続けると、レース当日に「走る」感覚がなくなる。神経系の刺激を残す意味でも、シャープナーは週1回は最低でも入れること。
1週間の組み立て例(2週前)
曜日構成例(あくまで目安)
- 月:完全休養
- 火:ジョグ40分(回復走)
- 水:レースペース走 10km + ジョグ
- 木:ジョグ30分
- 金:シャープナー(100m × 12本)+ ジョグ30分
- 土:ジョグ50〜60分(ゆっくり)
- 日:ロング走 15〜18km(マラソンペース+20秒/km)
合計距離はコーディネーション期の50〜60%程度に収めるのが目安です。
シフト勤務でのテーパリング
バス運転手のシフト勤務の場合、「週2日連休が固定」ではないため、テーパリングの曜日固定は現実的ではありません。
私が意識していること:
- キー練習(レースペース走・シャープナー)の優先順位を最上位に
→ この2つだけは、どんな週でも入れる - 連勤4〜5日が続くときは、翌休みの日に合わせてロング走を組む
- 「今週何km走ったか」ではなく「疲労感がどの程度か」を基準に量を決める
テーパリング期こそ、体の声を最優先にする週。シフト勤務ランナーにとっては、むしろ「休める言い訳ができる週」と前向きに捉えるのがコツです。
レース前日・当日の過ごし方
前日
- 20〜30分のジョグ + 100m × 3〜4本(軽いシャープナー)
- 夕食:食べ慣れたもの、炭水化物多め(カーボローディングは2〜3日前から)
- 睡眠:8時間確保が理想。眠れなくても横になるだけでOK
当日スタートまで
- 起床:スタート3時間前を目安
- 朝食:2〜2.5時間前に消化しやすいもの(おにぎり・バナナ・ゼリー)
- ウォームアップ:スタート30分前にジョグ5〜10分 + 流し3〜5本
→ リディアード式はウォームアップを重視。「いきなりフルスロットル」にしない
まとめ
- テーパリング期は コーディネーション期終了後の2〜3週間
- 距離は段階的に削減(70%→50%→30〜40%)
- シャープナーは最終週まで継続(スピード刺激を落とさない)
- 3週前ロング走は20〜25km、2週前は15〜20km、1週前はなし or 10km以内
- テーパー・タントラム(不安感)は正常反応。追加練習しない
- シフト勤務ならキー練習2つ(レースペース走・シャープナー)を最優先に固定
- 前日ジョグ+軽いシャープナー、当日ウォームアップを省略しない
「Train, but don’t strain」は最終週まで続く哲学です。テーパリング期を制する者が、マラソン本番を制します。
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テーパリング期は練習量が減る分、ケアと状態管理がパフォーマンスを分けます。
実走データで確かめたい方へ
私が静岡マラソン(サブ2:42達成)に向けて歩んだ6ヶ月のテーパリング期の実際のメニューと、週ごとの体感・疲労の変化を、noteに記録しています。
▶ 【マラソン】リディアード式「期分けトレーニング」完全実践ガイド|目標タイムに近づく6ヶ月プログラム(note)
期分け全体の流れを先に押さえたい方は、入門記事から:
→ リディアード式マラソントレーニング入門|「期分け」で迷子にならない練習の組み立て方


